昔、僕は絵を書くのが大好きだった。
たぶん中3ぐらいまではそうだった。
漫画家になりたいと思っていた時期もあったと思う。
最近、ふと「絵を書かなくなったのはいつ頃からだろう」と考えてみたら、高校1年からだとはっきりと思いだすことができた。
中学ぐらいまでは普通に絵を書いて、クラスメイトに見せたりしてた。
それが恥ずかしいことだとは全く思っていなかったが、多分そのクラスメイトには痛い目で見られていただろう。
中学の卒業文集に、思いっ切りオタクっぽい絵を描いた。
当時はまったく恥ずかしいと思わなかったが、後で見直すとかなりの黒歴史のように感じてしまった。
その反動からだろうか。
高校に入ると、急に今までの自分を否定するようになり、オタクっぽさから脱却しようとした。
高校デビューとは少し違う。
決して人気者になりたかったわけではなく、「普通の人」にならなければならないという強迫観念に支配されていたのだ。
高校に入ってから、絵は一切描かなくなった。
それまでゲーム音楽とクラシックしか聴かなかったのだが、流行曲を無理に聴くようになった。
まんがタウンを読むのをやめ、週刊少年ジャンプを読むようになった。
それと同時に、クラスのいわゆるオタク層たちを、心のどこかで軽蔑するようになっていたかもしれない。
今から思うと、この辺から僕はおかしな方向に進み出したような気がする。
必要以上に他人の目を気にするようになったのも、この頃からだ。
文理選択では、みんなが文系に行くから僕も文系を選んだ。
大学は「普通っぽいから」という理由で経済学部を選んだ。
とにかくこのころの僕は、「普通」が一番正しいという信仰に取りつかれていた。
しかしどう頑張っても僕は、僕の目指す「普通の人」にはなれなかった。
大学に入ってからは、人を避けて自室に引きこもるようになった。
普通じゃない自分を見られるのが、怖くてたまらなかったからだ。
25歳になった今でも、この強迫観念は消えずに残り続けている。
だから僕は今でも外に出るのが怖い。
でもそろそろ、封印してきたものを一つだけ解放してみようと思う。
というわけで最近、毎日絵を描くようになった。
コピー失敗した用紙がたくさんあるので、それになぐり描いている。
といっても下手くそなので、オリジナルではなく、漫画の好きなシーンを摸写して楽しんでいるだけだ。
描き終わった絵は、誰にも見られないように小さく折り畳んで、別の紙に包んでゴミ箱に捨てる。
親に見られたら恥ずかしくて死ぬので。
全然思うように描けないし、続くかどうかは分からないけど、しばらくやってみようと思う。